ドイツにおける夏の風物詩

mensch2006-08-06

7月はドイツにおいて珍しく猛暑であった。連日最高気温が35度前後・・・。エアコンを設置していない公共交通機関や店内は、さながらサウナ状態だ。それでもドイツ人は、文句も殆ど言わずジッと我慢の子。聞くと大概が、「夏は暑ければ暑いほうが夏らしくて良い」「エアコンの人工的な風が嫌い」との答えが返ってくる。中々新鮮な答えだが、よくよく考えてみると、昔の日本人も同じ答えを返していた事だろう。


Klimaanlage(エアコン)やHeizung(暖房装置)との表現はあっても冷房装置の表現がドイツには無く、エアコンとして一緒くたにされており、冷房は一般的ではない。日本よりも夏が短く湿気も少なく、8月半ばともなれば涼しくなるドイツでは冷房装置が活躍する時期は精々一ヶ月くらいだ。


それでもドイツにも夏は必ず来る。私見なドイツの風物詩として、自然発生的サウナの他にハエが思い浮かぶ。ハエは句の世界では夏の季語だがセミのいないドイツにおいて、虫の世界ではトップクラスの出没率だろう。
ドイツの町は自然が多いが、虫は意外と少なく、日本よりも見る機会が少ない(パン屋の甘い臭いに誘われてパンのショーケース内を飛び交う夏のアブは別として)。しかし、ハエは別格だ。彼らは至る所に出没する。故に網戸の無いドイツの建物内にも必然的にハエが入ってくる。オープンカフェやオープンレストラン、安インビス(軽食屋)の酷いところでは群を成したハエが縦横無尽に飛び交う。


だが、ここで驚くことが一つある。ドイツ人はハエを追い払わない。ハエが食べ物に着地しようが、自分の体にしがみつこうが、意に介さないで何事も無いように談笑し食事を取る。彼らの対応を見てここはドイツではなく、インドなのでは?との錯覚に陥ることもある。
対照的に日本人は世話しなくハエを追い払っている。この差に、私はドイツ人の大陸的おおらかさや日本人の島国的情緒を感じる。確かに、ハエが付こうが飛ぼうが現代社会において死に至ることはまず無い。食中毒の危険は有るのだろうが、食事の前に手を洗わないドイツ人は元来、ばい菌にも抵抗力があるのだろう。ハエが頭に付こうが目の前を飛ぼうが優雅に食事をするドイツ人、食事中にハエを始終嫌そうに追い払う日本人。その振る舞いは異なるが、いずれにも言えることは“構図が滑稽”だ。
せめて、食事をする場所くらいはハエのいない衛生状態を保っておくべきでは?との発想は日本的なのだろうか。