mensch2007-02-24

トヨタの躍進は止まらない。製造業では名実共に世界一の企業だ。一兆五千億円の純利益は文句なしの世界一だが、販売台数及び生産台数も今年で世界一になる。アメリカではビッグ3の牙城を崩したがこれは勿論、外国企業として米国歴史上初めての快挙だ。
トヨタの勢いはドイツとて同じで、前回もお伝えしたがドイツ国内での顧客満足調査では、トヨタ系列のスバルとトヨタが自国ドイツ勢を差し置いて一位二位を独占した(ちなみに同じトヨタ系列のダイハツも5位で、トップ5は全て日本企業)。
そんなトヨタが今週、ドイツ国内で大々的な戦略を打ち出した。大型広告媒体の実に5割から8割を利用する前代未聞の宣伝活動を開始した。
ドイツの街角には円柱状の広告塔だけでなく、最近はフラットな大型広告も存在する。駅構内から建物の壁看板、道路の看板まで全て規格が同じ期限付き大型広告なのだが、広告を規制し整然としているドイツの街角において、その効果は絶大だ。新型車AURIS・オーリス(ドイツトヨタHP参照)の宣伝だが、目を上げると町中、何かしらトヨタが目に入る事になる。
昨今、トヨタは下請けイジメ、労働者酷使と卑下されがちだが、利益や世界一に対する貪欲なまでの姿勢は悪い点ばかりではない。


何故、トヨタは伸び続けるのか。これはやはり簡単に言えば、社員一人ひとりが個々の利益よりも企業の利益を第一優先事項としているからではないだろうか。トヨタと同じく勢いを保ち続けているパナソニック東芝キヤノン(キャノン)、それとは対照的に勢いを失っているソニー現代自動車や、合併を繰り返すカメラ企業。こういった企業間の違いは、働くものの意思にもつながっている。
例えば、下請けが仕入れ担当者に何か贈ったとしよう。極端な話だがトヨタであれば、「そんな余裕があるのであれば、卸値を少しでも下げてください。」と言うだろう。勢いを失っている企業は、こういった点における倫理観が崩壊しているのではないだろうか。背任で有罪となった現代自動車会長は元より、売上を落としている企業社員の多くは個人的利益だけによる関係会社との取引しか考えなくなり、技術流出も起こる。そういった社員が存在する企業の売上が下がるのは至極当然とも言える。
確かに、関係会社や下請けにとっては個人的利益の有無で取引をしてくれたほうが、利益も高い。お互いの担当者にとっても良い関係を保てるだろう。だが、企業利益を考えるのであれば、これは背任罪以外の何物でもない。
トヨタはこういった曖昧で陰湿な関係を削除した。だからこそ、下請けや労働者からは倦厭される。だが、少なくとも筋は通っている。公務員は賄賂が許されないが、勤め先の利益など考えていない。トヨタ社員は利益を考える公務員と言えるだろう。


トヨタが生んだカイゼニングは多くの世界企業に受け入れられた。それと同じように、トヨタの公務員的でありながら利益を優先した経営方針が世界に受け入れられる事は難しいだろう。だからこそトヨタの一人勝ちも終わらない。


トヨタ、07年に942万台生産計画 「世界一」濃厚に 2006年12月22日asahi.com


トヨタ、米市場で初の年間3位 22年で「ビッグ3」崩す(2007/01/04 10:17)産経WEB