ドイツの車事情

日本人の車に対する感情とドイツ人の車に対する感情の違いは大きい。こと車に関しては欧州各国は近似した価値観を有しており、町並みにも反映されている。
ドイツは駐車場を持っていなくても車を所有できる。駐車場が無い場合は路上駐車となるが、道幅は日本と比較にならない位に広く、多くの道路が歩行者道と自転車道と縦列路上パーキングを備えている。都市計画の段階でも、庭や木々の棲み処は確保しても車の住まいは確保しようとはしない。


では何故、車はこの様な地位に甘んじているのか。ヨーロッパ人にとって、車は馬車の延長線上に存在するとの思想が根底にあるからだ。そう考えて、昔の写真と今の写真で同地域を見比べてみると、確かに停車している位置関係を比べると馬車が車になっただけだった。馬車が道の脇に並んでいる構図は、車の縦列駐車とそっくりそのまま。


車はあくまで移動の道具であり、日本人の様な愛着が生まれる事もないのだろう。一部の金持ちの車を除いて、ドイツの車は総じて汚い。
洗車を余りしないとの事もあるが(冬は雪で、夏は虫で一瞬のうちに汚れるからとの理由もある)、時々日本では廃車でもお目にかかれないような“物”が走っていたりする。塗装は剥がれ、あちこちに凹みがあり、部分的に色違いになってしまったボディーを装着して怪音を響かせながら走っており、ここは本当に先進国か?と思ってしまう。
そこまでは行かなくても、走行距離20万キロを越える車を平気で売っている光景を目にする。私が見た中で最強の売値の車は80年代のゴルフワゴン、走行距離23万キロ、値段・・・2000EUR、大凡26万円。プレミアと言うには塗装も剥げ余りにも身窄らしい。個人売買で路上駐車している車のガラスに貼っていた紙に書いてあったものだが、稀に見る浅ましさを感じてしまう。
こういった異常な中古の値段でも分かるように、ドイツは総じて車が高い。日本の若者は様々な車に乗り、青春を謳歌しているが、ドイツ人の平均的な若者は中古のVWゴルフしか乗らない(乗れない)。
日本で見る改造車など、夢のまた夢で精々、ゴルフやアウディA3の最も安いバージョンを買って、テールランプやマフラーを交換する位。車から鑑みる社会でも、ドイツより日本は裕福だ。


車に金をかけられる日本人の若者と、金をかける余裕も無いドイツの若者。ドイツの若者からすれば、日本の若者は恵まれすぎた環境にいる。にもかかわらず何故、日本の若者は荒んでいくのだろうか。対照的に、ドイツの環境は若者に清貧の思想を否が応でも植えつけて行く。
欲は尽きることが無く、同じように我慢もまた無限大なのかもしれない。