イケアの日本再進出と現実

遂に日本にも家具のIKEAがオープンしたが、ここドイツにおけるIKEAに対するイメージは正直に言ってイマイチ。大概のドイツ人に聞けば、使い捨ての安物との言葉が返ってくる。
それでもIKEAは高価だと思われてきた北欧家具を一般市民にも提供して成長してきた。


IKEAのデザインは北欧風だが、価格は格安だ。価格が安い理由は人件費の高いスウェーデンで作っていないから至極当然か。
だが、世界で成功しているからといって日本でも成功するとは限らない。日本の国内市場は世界市場よりも遥かに進んでいる(競争が激しい)事がしばしばある。昨今ではボーダフォンの低迷を出すまでもなく、特にサービス販売関係において、欧米企業は日本国内市場で日本企業に惨敗している。
販売ではウォールマートが世界で高い競争力を保っておりドイツにも進出しているが、仮にドイツにイトーヨーカドーグループが大資本を持って参入した場合は、ウォールマートの著しいシェア低下は免れない。サービス、接客、商品、流通全てにおいてイトーヨーカドーはウォールマートよりも優っている。
身近な点で見ても、客に対する社員の対応は雲泥の差がある。ウォールマートが日本市場で惨敗した理由は言うまでもない。


さて、このIKEAの家具だが、見た目はシンプルでも他の欧米企業の家具と同じく日本のものよりも異常に重たい。かといって頑丈かと問われれば疑問が生まれる。更には、組立説明書も日本の企業よりも親切ではない。
対照的に、日本にはIKEAよりも優れた家具を量産している会社が数多く存在する。通販会社NISSENの家具も、IKEAの家具よりも優れているように思えるが、文句無しに言えるIKEAより競争力のある会社はニトリか。


ニトリのサービス、価格、品質管理、それら全てに対してIKEAは敵わない。価格で日本企業に敵わないIKEAは、日本市場では北欧デザインというイメージで対抗するしかない。海外においては安さを前面に打ち出して成長してきたIKEAにとって、イメージだけで売り上げを伸ばす事は至難の業だろう。
更には、IKEAが家具と並行して売る小物においても、日本ではダイソーに代表される100円ショップ企業や無印良品が、欧米企業やアジア企業には敵わない価格と品質を誇っている。


常々思う事だが、海外企業は日本市場を甘く見過ぎているのではないだろうか。対照的に世界を席巻する程の力を有しながら、国内市場で満足する日本企業の何と多いことか。
当たり前だが、今まさに世界一の売上高を目前にしているトヨタは国内に留まっていたら存在しなかった。
日本企業はどの企業も第二第三のトヨタになりうる潜在能力を持っている(トヨタニトリも、先行き不透明な中国へ陶酔する行為は懸念材料として残るが・・・)。


20年前にIKEAは日本市場から撤退したが、今回は満を持っての再参入。IKEAもその間に世界最大の家具チェーン店に成長したのだろうが、日本市場は更に成長している。
イメージは大切だが、是ほど崩れやすいものはない。信用を失ったら直に崩れ去る。昨今の北欧家具は日本の伝統家具の影響を受け、随所に和のテイストを散りばめているが、本場日本ではどの様な反応を示されるのだろうか。
IKEAの今後に注目したい。


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イケア船橋店