桜の日本人 タンポポのドイツ人

mensch2006-05-16

ここドイツも五月に入り急に暖かくなり、時々夏日が顔をのぞかせている。
ドイツの冬は長く暗い。だからこそ、春を通り越して五月に唐突にやってくる夏は人々の心を掻き立てる。


ドイツには海開きやプール開きがない。人々は五月にも関わらずプールで泳ぎ、裸で日光浴をする。そして町は人々で溢れかえる。
いつも思うのだが、この町にこんなにも人が息づいていたのかと感心させられる。彼らはまるで長い冬眠から覚めた野生の生き物のようでもある。ドイツの至る所、それこそ住宅街にもある公共の芝生にドイツ人が幾重にも寝転がり、ある人はビール片手に食事をし、ある人は読書をし、ある人は転寝をする。各々、行っていることは違うが、何れにしても久方ぶりに浴びる太陽の恵みを存分に楽しんでいる。


そう・・・彼らドイツ人はまるでタンポポのようだ。今まで、その存在すら分からなかったのに、日差しが強くなると一斉に花を咲かせ自らをアピールし一面を黄色く染めさせる。そして、太陽の恩恵を受け綿毛を纏った種は風に乗って各地へと旅立っていく。
これから、ドイツ人にとって待望のウアラウブ(休暇)の季節がやってくる。彼らは五月に地元で太陽を楽しみ、その先1ヶ月前後の長期休暇で更なる太陽を求め各地に旅に出る。


桜の日本人とタンポポのドイツ人。どちらも春に花を咲かすが、その後の生き方には大きな違いがあるようだ。
儚くも繊細で可憐な桜。地味でありながら逞しく力強いタンポポ。桜の花は集団主義を尊ぶが如く一斉に咲き誇り、タンポポの花は各々が個人主義を貫くが如く咲き競う。
生き方は違っても、どちらも美しく精一杯命を表現している。