ドイツにおける外国人排斥と暴行事件

ドイツではワールドカップが近いとの事もあり、極右勢力であるネオナチの動きが活発になっているとの解釈の元で、ネオナチ弾圧が激しさを増している。
メーデーの4月1日、ロストックやライブティヒではデモを行った極右と、それを阻止する勢力との衝突が起こり逮捕者が続出したが、マスコミはネオナチの暴挙と喧伝した。私は極右も極左も好まないが、それらに発言する立場も与えずに弾圧する行為は民主主義と思えない。弾圧で抑えても矛盾やわだかまりは無くならないからだ。


それに関連した話題として、一つの暴行事件を元にドイツにおける言論そして思想の動向を探ってみたい。
事件は4月15日、復活祭の日に起こった。エチオピア系ドイツ人がブランデンブルク州ポツダムの街角で暴行を受け意識不明の重体となり、その後、容疑者の二人のドイツ人が逮捕された。
対テロ対策で活躍する連邦検察庁は事件が起こった当初から、外国人排斥を行っている極右勢力の犯行と断定し、捜査を行っていた。妻はネイティブドイツ人だが、被害者から妻へのネイティブアフリカン蔑視の表現である“二ガー”を叫んている加害者の携帯電話音声が公開されたからだ。これにより、事件は単なる暴行事件ではなく、外国人排斥事件であるかのように印象付けられた。
だが、こういった全容の分からない事件を被害者がアフリカ系なだけで、留守番電話の罵倒だけで、外国人排斥事件として喧伝する当局やマスコミは如何なものだろうか。
被害者と加害者の人種が逆の立場であったらどうなっていたのか。この様な捜査や報道をする人々こそ人種差別主義者に思える。
そもそも、被害者はドイツ人にも拘らずアフリカ系と大々的に報道される事に抵抗を感じはしないか。被害を受けても人種を理由に同情を貰う行為を快く思うのか。年配の方の中には、老人として特別扱いされることを嫌がる人も多い。それと同じ感情は抱かないのか。
当局やマスコミは、極右弾圧の大義名分の下に被害者や被害者家族の心情や人権、プライバシーを無視している。


例えば被害者が、極端に背が高かったり背が低かったり、または極端に太っていたり痩せていて、留守番電話に容疑者と思われる人物が、ウドの大木やモヤシやデブやチビだのと罵倒した声が入っていたとする。捜査当局はこれを身体的特徴差別主義者の犯行だと大々的に喧伝しただろうか。
そこまではいかなくても、女性や身体障害者や貧しい東欧から来た移民だったら、同じように女性差別主義者や身体障害者差別主義者や東欧系差別主義者と喧伝しただろうか。
「このアマ!」だけで女性差別事件として捜査することに何の意味があるのだろうか。それを口実に捜査や報道する人々の不可思議さが、分かってこないだろうか。
過剰な差別反応が差別を助長し、自らも差別しているとの事に何故気付かないのだろうか。


当事件後の、4月27日にもビスマールでアフリカ人が暴行被害を受けており、同様に大きく報道されている。
だが、暴行事件は他にも数多く起こっている。同じ犯罪であれば同等に扱うべきだとは思うが、ネイティブドイツ人が暴行されるよりも、ドイツ人女性が暴行されるよりも、外国人が暴行されるほうが大きな問題(話題)なのだろうか。


一部の報道では当時、被害者は泥酔状態にあり喧嘩をしていたようだ。更には妻やバスの運転手にもからんでいた模様だ。重症を負った原因が転倒して起こった可能性もあるという。だが、被害者が重体である事実は変わりない。


極右の犯行と断定付ける行為は、容疑者の動機が完全に推測通りだと分かってからにすべきであったが、今回の事件が結果として極右の犯行であったとしても、過剰な極右狩りは何の解決にもならない。
言論の自由は弾圧からは生まれない。外国人を排斥弾圧する極右と、極右を排斥弾圧する政府及び反極右勢力は同じ穴の狢ではないだろうか。双方共に絶対正しいとして譲らない。だが、双方ともに自分達の悪い部分は棚に上げている。


ドイツは今、ナチスによる言論統制を忌み嫌いながら、リベラリストが絶対的独裁権を持った言論統制国家に落ちぶれようとしている。
これでは、差別を食い物にする輩が増えるだけだ。連邦検察庁ゲシュタポであってはならない。無論、犯罪者は裁かれるべきであり、被害者は擁護されるべきだ。そして、被害者を自身の都合の良いように利用する人々も許してはならない。




真相は別として、上記被害者の犠牲を無碍にするかの行為は如何なものか。韓国で2000年に起訴された偽証罪は一千人超、日本は僅か5人。誰がとは言わないが、差別を自身に都合が良いように利用する行為も許してはならない。

間もなくW杯、独で韓国人男性殴られる「憎悪の言葉を…」 (共同) 

ドイツ東部マクデブルクで22日夜、韓国人男性(31)がドイツ人男性(23)に殴られ負傷した。地元警察当局者が23日、明らかにした。

 ドイツ東部では外国人がネオナチとみられる男らに暴行される事件が相次ぎ、ショイブレ内相がサッカーのワールドカップ(W杯)に向けて警戒強化を表明したばかり。

 韓国人男性は「外国人憎悪の言葉を浴びせられた」と話しているが、目撃証言と食い違うため警察当局は慎重に捜査している。
 当局者によると、韓国人男性が路面電車に持ち込んだ自転車がドイツ人男性に触れたのが原因で口論となり、停留所で殴り合いになったという。(共同)5月24日