IKEAの日本観

IKEA日の丸スクリーン


IKEAの話題は前回取り上げたが、今回も再び取り上げてみたい。
IKEAのトミー・クルバーグ社長は日本再上陸の際、「イケアのライバルは日本の家具業界などではない。ライバルはディズニーランドだ。」と豪語していたようだが、北欧家具は日本の家具に色濃く影響されているのも事実。実際には、日本の家具業界の想像力そして伝統と技術はIKEAに代表される他国企業が敵わないほどの力を有している。


ニトリに代表される日本企業は、国の援助無しで大きくなった。方や国の援助と使命により大きくなった国策企業IKEA。国家が関与して方向性や機動力を失う企業は数多い。
憂慮すべきことに、販売力及びサービスにおいてもIKEAは日本企業を過小評価している。


今回はそんなIKEAのイデオロギーが垣間見られる広告を紹介したい。ワールドカップも近くなり、多くのドイツ企業は便乗して売り上げに結び付けようと躍起になっているが、今回のIKEA広告は、代表各国の料理と各国をイメージしたスタイルの家具を売り込むための日別フェアを掲載している。それら国々の面子は、初日が日本、順にメキシコ、スウェーデン、オランダ、イタリアの五カ国となっている。メキシコ以外は欧州の面々だが、その中のトップ(初日)に日本が入っている構図は何を意図しているのか。
IKEAにとって日本の家具業界は、目の離せない存在なのだろう。






この広告で紹介している日本風の家具を簡単に説明すると、まずはシンプル イズ ベスト。そして配色は赤か黒。配色が無い場合は天然木のライトアイボリー。食器は、寿司や魚介類をあしらえたシンプルな白磁器が掲載されている。
期間中の店舗内レストランでは、日本の日にライスと野菜と肉団子にジュースザウアーソースが出る。このジュースザウアーソース。ドイツではタイや中華のレストランで使われるソースで酢豚には合うが、どう考えても日本の味ではない。せめて醤油にして欲しいものだが、これがIKEAによる日本観の限界なのだろう。醤油は田舎のスーパーでも普通に売られており、ドイツでも好まれているのは承知の事実ではなかったのだろうか(メキシコが、ライスの代わりにタコスチップスというのも安直だが、日本とメキシコ以外の国はポテトかジャガイモというのは的を射ている)。
日本の伝統文化を中国や東南アジアの文化と混同して捉えてしまう欧米企業が、日本市場への的確な調査及び国民心理を把握しているかどうか激しく疑問だ。
商品を売り込むためには相手先の文化や嗜好を計算しつくさなければならないのだが、この先が少々心配に思える。


対照的に日本人による他国文化に対する洞察力は凄い。日本で作られたアニメ・アルプスの少女ハイジニルスのふしぎな旅世界名作劇場等、数々の児童向けアニメは今でもドイツで放映されているが、どのドイツ人も違和感なく親しみながら視聴している(欧米アニメにおける日本は、中国のみならずタイも一緒くたにされている事もある。これは距離的文化的にもベルリンとバクダットを同じとして表現するようなものだ。)。


IKEAは本当に純粋なAUS SCHWEDENなのだろうか。
日本の家具業界など、ライバルではないと豪語しつつも日本を意識し、日本に影響された家具を作っているIKEAは一体何様で、そして何処へ向かうのか。
身の程知らずも結構だが、謙虚に「私達は常に日本文化に影響されてきました。そして、今も日本を意識しています。今回の日本再進出はその感謝のしるしです。」と親日家発言でもすれば、好感が持てそうなものだが・・・。




イケアの日本再進出と現実