時間に対する概念における日独の違い

ドイツ人の気の長さには正直、私も閉口する。俗に、日本人は忍耐強いと言われているが事、時間に関しては非常に短気な民族と言えるだろう。
日々、スケジュールに追われている日本の環境であれば仕方の無いことだが、海外に出たとしてもこの『貴重な時間を一分でも節約したい、短縮したい』との思いは変わらない。その最たる象徴が“並ぶ行為”であろうか。確かに日本においても万博やディズニーランドや人気料理店で行列が出来る事があるが、その様な特別な場所でなくともドイツでは行列が出来る。例えば、街中に行列が出来ているとしよう。除いてみると何の事は無い、ただのポテトとソーセージを売っている出店だったりする。そうではない場合も、単なるアイスクリーム屋との事が多い。出店は通常、同業他店が無い場所で商売をするものだから、それも有りとしよう。
だが、ドイツは普通の店でも行列が出来る。それは話題の店でも、希少な店でもない。マクドナルドやバーガーキング等のファーストフード店や、近所のスーパーでも普通に行列が出来るのだ。私も含め、多くの日本人はファーストフードとの名を曲がり形にも冠している店において、半時でも待つことに抵抗を感じるが、ドイツ人は30分経とうがジッと待っている。不思議なもので、行列に対して抵抗力を持っているドイツ人は、ファーストフード店に入った場合、入り口から遠い受付カウンターが例え空いていても、入り口に近い長蛇の列に並ぶ。多くの日本人等は間髪入れずに空いている受付カウンターに向かうが、多くのドイツ人はただ黙って待っている。受付の店員が暇を持て余し、やっと「こちらへも来てください」と言われて、動き出す有様だ。どうやら彼らにとって、そこが例えファーストフード店だとしても、5分10分の違いは大した問題ではないようだ。
そして、客も客だが店員も店員だろう。スーパーのレジで他の店員と私語を交えながらの精算、長蛇の列を差し置いての休憩。これらは偏に大陸国家ドイツの成せる技なのだろうか。
時間を守らない行為は欧州全般にも言えることだが(日本の環境や日本人が時間に厳密すぎるのも問題だが・・・)、ドイツも例に漏れず時間を守るとの約束事に関してはルーズだ。都市間列車は遅れるのが当たり前、地下鉄は最初から時刻表など無い。公共機関がこの様な有様だから、待ち合わせ時間に遅れても謝るドイツ人は非常に少ない。
その他の分かりやすい点として、エレベーターが挙げられるだろう。他の欧州諸国でも多いがドイツでは特に“閉まる”のボタンが無い。たまに“閉まる”のボタンが有った場合のドイツ人の驚きように、日独のギャップを感じずにはいられない。
多くのドイツ人にとって、これらは取るに足らない些細な問題である。ドイツで生まれ育った人々にとって、それこそ『Egal』どうでもよい事象だ。こういった事象に一々焦りを感じる私は、島国根性丸出しの矮小な神経を持っているともいえるだろう。
とは言えど、もう少し日本独特の“察する文化”も分かって欲しいとの願いは我侭というものだろうか。