豊かさとハングリー精神

日本とドイツ、両国共に豊かな国だ。だが、国の豊かさに比例して若者のハングリー精神も低下してゆく。ハングリーとは大辞林から引用すると”物事を強く求める精神的な飢え”と解釈されているから然もありなん。これ以外にも、向上心や不屈の闘志との意味も当てはまる。日本人の若者にしてもドイツ人の若者にしても、このハングリー精神は弱くても自己主張だけは強い。だが、よくよく見ていると、自慢にするそれすらも単に我侭と自己主張を履き違えていることに気付く。
嘗てのローマ帝国は何故滅びたのか、これは偏にハングリー精神の衰退が原因ではないだろうか。辺境の地まで水道橋を築いた古代ローマ人にはハングリー精神があった。国を守り誇りにするとの気概もあった。だが、今のローマ人はどうであろうか?彼らは本当に古代ローマ人の精神や遺伝子を引き継いでいるのであろうか。自国が大国になれば、生命の危険も将来の不安も無くなる。無能でも取り敢えずは生きていける。ローマ帝国は国が大きくなるにつれて、休日も増え、無料のパン支給も増大し、コロシアム等の催しも増えていった。人々はハングリー精神云々よりも、己の欲望を享受する事だけに専念するようになった。最終的にローマ帝国末期のローマは首都でもなかったし、人口も数万人にまで減少していた。ローマがハングリー精神溢れるゲルマン民族に蹂躙されるのも時間の問題であった。そして、ゲルマン民族がローマを完全に滅ぼしたとき、僅かながら残っていた古代ローマ人の精神も終焉したのではないだろうか。私見ながら今の多くのローマ人はハングリー精神よりも、食事と色恋に重点を置いているようにしか見えない。
今後、日本が更なる成長を遂げるにあたり、学歴云々よりもハングリー精神の育成が重要になるだろう。この点において、日本の教育にはまだ救いがある。学校規則、拘束時間の長さ、部活等の放課後活動の充実等々、嘗ての私はこれら事項に対してアンチ的な意見を持っていたが、何れも厳しい実社会では大いに役立っている。
だが、残念ながらドイツにおいて、これら事項は倦厭されている。昨今、ドイツ人の学力低下が問題視されているが、何よりも問題にすべきは、ドイツ国内での学校教育におけるハングリー精神の育成不足ではないだろうか。


世界人口の1%、富の4割占有=個人資産平均は日本首位−国連大学 

世界人口の1%が個人総資産の4割、2%が半分以上を所有する一方、全体の半分の貧困層は総資産の1%しか持っていない−。国連大学世界経済開発研究所(ヘルシンキ)は5日、世界の個人資産に関する研究結果を発表した。調査では、日米独などの最富裕層が世界の富を独占、国際社会に激しい格差があることが改めて浮き彫りとなった。
 それによると、2000年の世界の個人資産は125兆ドル(1京4375兆円)で、世界の国内総生産GDP)の合計値の約3倍。生活費の格差を調整して算出した世界平均は、1人当たり2万6000ドルだが、日本は18万1000ドル、米国も14万4000ドルでずばぬけて高く、インドの1000ドルなどと大きな格差があった。 
時事通信) - 12月5日