日独ビール・コーヒー事情

ドイツに来て恋しくなる日本の飲食物は多いが、その逆もある。それはソーセージ・ハム・チーズだろうか。
しかし実際は、ドイツよりもバリエーションが少ないだけで、日本の方が味の点では繊細で上品だ。
では何が恋しくなるのか。それは、ビールとコーヒーではないだろうか。
ドイツにはビール純粋法があり、大麦・酵母・ホップ・水以外を使用する事が禁じられている。それ故に、キレが無い代わりに深くコクのある味わいは、日本では中々味わえない。最も、日本の様にキレの鋭いビールはドイツに無く、ピルスにおいてもアサヒ・スーパードライに遠く及ばない。
高温多湿な日本の夏ではキレのあるビールが美味しいが、乾燥しているドイツの夏ではドイツのビールが旨い。日本の夏にドイツビールを恋しくなる事は無いが、乾燥した日本の冬にはドイツビールが意外と似合う。


そして、ビールと共にドイツが誇る美味、コーヒー。ドイツでは、立ち食い軽食店から高級レストランに至るまで美味しいコーヒーが飲める。マクドナルドでもエスプレッソやカプチーノが有り、最近では既存マクドナルド店舗の一角を喫茶店に改装したマックカフェなるものも登場している。
ドイツ人のコーヒーに対するこだわりは、世界一と言っても過言ではない。家にはコーヒーメーカーだけではなく、エスプレッソマシーンがドイツ版三種の神器に成りつつあり、種類も価格も豊富だ。
どんなに美味しいレストランでも、コーヒーがまずければ客が来なくなる。故に、ガソリンスタンドの自動販売機でも挽きたて良質のコーヒーが飲める。


日本に来て数多くの美味に舌鼓を打っても、ホットコーヒーや冬におけるビールだけは頂けない。ビールやコーヒーは身近なものだけにドイツ人の拘りを端的に表しており、日本人も学ぶべき点が多い。だが、技術革新との点では日本に遠く及ばない。
ドイツは16世紀に制定された純粋法により変わらぬ味を受け継げるようになったが、日本の様な趣味嗜好を凝らしたビールが生まれる事は無い。コーヒーにおいても、缶コーヒーやインスタントコーヒーのバリエーションは殆ど無い。


とは雖も、ドイツ人の持つ実直・剛直さ、日本人の持つ柔軟性・玉虫色が生み出す商品は何れも魅力的だ。
両国の国民性や気候風土を味わうには、ビールやコーヒーを飲み比べるのも一興だろう。