ドイツ外食産業が示唆する格差社会



図:朝鮮日報


一時帰国する度に、日本はどの国家よりも恵まれ、文化力の有る格差の無い世界第2位の確固たる経済大国だと実感する。数多くある世界トップシェアの日本企業群、世界最長の寿命、知的水準、溢れる商品。
ドイツは世界第3位の経済大国だが、それでも日本とドイツの差は歴然としている。
2005年時の国民総生産(GNP)は日本が世界第5位(1位リヒテンシュタイン、以下、ルクセンブルク、スイス、ノルウェー)、ドイツは17位。国内総生産(GDP)は日本が4兆5千億円で世界第2位、ドイツは2兆7千億円で3位、中国は1兆9千億円で、日本はドイツと中国二カ国分もしくは英仏二カ国分の経済力を有している。
日本の底力が何たるか数え上げたら限が無いが、今回は最も身近なところ、高齢者と外食産業で分かる日独の国力差を考察してみたい。




図:ADAC Die Welt 2005 ※BSP=Bruttozosialprodukt(国民総生産)


日本では考えられないことだが、ドイツは消費に高齢者が多く関っている。旅行産業でも顕著で団体バス旅行は高齢者ばかり。ドイツの外食産業もまた高齢者によって支えられており、昼間のレストランは高齢者で溢れかえる。
外食産業を見ると、ドイツの現状が顕著に分かる。日本であれば、昼間から子供を連れた家族連れや、近所の奥様連中や学校帰りの高校生が大挙してレストランに押し寄せるが、ドイツではこういった層は皆無に近い。では何処へ行くのかというと、マクドナルドかバーガーキングやドナー屋(トルコケバブ屋)しかない。インビスという安い軽食屋もあるが、そこの客層も多くが高齢者であり、他は労働者しかいない。
日本の外食産業は世界一発達している。対照的にドイツはレストラン自体が少なく、ファミリーレストランというチェーン産業も皆無だ。スターバックスケンタッキーフライドチキン等のファーストフード店も、最近になってやっとドイツに進出した。
レストランの多くは個人経営で、価格も高くサービスも悪い。ドイツでは他の諸国と同じく水はタダではない。チップも必要だ。故に、レストランで食事をするとなると一人当たり最低でも15EUR(2400円相当)を支払わなければならない。二人であればEUR40(6400円)は必要となる。日本であっても高く感じるから、一般ドイツ人にとっては簡単に払える料金ではない。結果として、年金を貰っている一番裕福な高齢者層しか訪れなくなる。


日本は資本主義体制だが、北欧と同等かドイツ以上の理想的社会主義体制と言われている。そのドイツが今、脱落しつつある。
ドイツは欧州の中でも北欧に近い格差の少ない国家だが、それも日本と比べると途端に色あせる。
ドイツには退職金制度が無いが、それは公的年金だけで生活できたからだ。しかし近年は、出生率の低下により維持できなくなりつつあり、国民は民間年金に手を出し始めている。公的年金の支給額は年々下がるばかりだ。
更には、日本で例えるところの消費税は昨年から19%に引き上げられた。


日本以上に高齢者に消費を依存するドイツだが、今後は厳しい状況下になり、頼りである高齢者の財布の紐も締められそうだ。
ドイツの格差社会は、身近な外食産業にはっきりと顕れている。高齢者さえも立ち寄らなくなったレストランは、一部の裕福層だけをターゲットにするのだろうか。
ドイツを比較対象としても、日本の格差社会は幻想でしかない。ドイツの外食産業は、日本型の外食産業を手本にしても良いのかもしれない。裕福層や高齢者依存からの脱出、これがドイツ再生の道と思われる。


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