夏とネクタイ


日本もドイツも大部分が温帯湿潤気候だが、様相は多少異なる。
ユーラシア西端は冬暖かく夏涼しく、1000mm以下と少量ながら年間を通して一定の雨量があり、西海岸性気候とも呼ばれている。対照的にユーラシア東端は、冬と夏の気温差が極端に大きく年間降雨量も1000mm以上の地帯が多い。
最近思うのだが、ユーラシア大陸の東端と西端の気候変動が同調しているような気がしてならない。ドイツは通年であれば不安定な気候だが、今年は4月下旬から連日25度から30度位の陽気が続いており緩やかだ。対照的に、最近の日本はドイツの天気並に変化が激しい。嘗て欧州が猛暑だった時も日本は冷夏だった。前年の日本は猛暑だったが、ドイツは冷夏だった。
環境破壊が叫ばれて久しいが、こういった関連性を鑑みるに当たり地球はやはり一つの生命体だと感じずにはいられない。


ドイツの夏は到来も早く過ぎ去るのも早いが、今年は以上の経緯もあり例年よりも更に一足先に夏模様となっている。
そうなると、人々の衣装もガラリと変わる。ドイツには衣替えが無い分、4月あたりから半そで短パンが登場し、6月ともなれば夏模様一色になるが、スーツ姿が異様に思えてくるのはドイツも同じ。
ドイツでは一般的に職場でもスーツを着用する者は殆ど居ない。仮に着用している人を見かけたら、それは営業マンか販売員のどちらかになる。
ただ、30度を超える陽気ともなると流石に様相が違ってくる。ドイツは職場や家は勿論、ショッピングモールでさえ冷房が無いところが殆どの為、施設内は蒸し風呂状態となる。このような状況下でのスーツ着用は自殺行為に近い。その為、普段はスーツを着る店員でさえ、Tシャツやポロシャツ姿になる。営業マンは新規顧客でもない限り、ネクタイを外しワイシャツ姿で得意先周りに奔走する。
故に、ドイツの町からネクタイ姿が消え去ることとなる。


ヒートアイランドと化し熱帯気候並の日本の夏に、重苦しいスーツとネクタイ姿で町中を闊歩する日本のビジネスマン。勿論、ドイツには日本のように最先端の清涼スーツなど無いが、見た目の暑苦しさが余計に日本の夏を暑くさせている。
スーツを発明した西洋が倦厭し、スーツを取り入れた日本が暑い中でも忠実に守っている姿は、西洋人にはどう見えるのだろうか。