H&Mの対日本戦略

H&M



世界第三位のスウェーデン衣料販売店H&M(ヘネス&モーリッツ 直訳:彼女と彼)が日本に上陸した。価格も海外店舗とほぼ同じとの事。
ドイツで同社は世界一の325店舗を有し、同社最大の売り上げを占めている。お洒落で安い店として老若男女知らない人は居らず、猫も杓子もH&Mの状態だ。


ユニクロのライバル店出現と揶揄されるが、実際には方向性を異にし、ベーシックなデザインと豊富なカラーバリエーションを基調とするユニクロは、価格は別としてベネトンに近い。
対照的にH&Mは最先端のモードを一過性ながら大量に生産する方式を取っており、ZARAの廉価板といえる。
故に日本でのライバル会社は存在せず、今後の成長も期待されるが、一抹の不安もある。


同社は他国とほぼ同じ価格を提供していると謳っているが、実際にはあり得ない。
流通形態及び関税によって各国にばらつきがあるのは避けられないからだ。欧州諸国でも統一されておらず、商品の値札はEU内共通ながら各国まちまちの価格が書き連ねられてあり、各国の物価と少なからず連動している。


殆んどの製品は中国やベトナム等の途上国で生産されているが、縫製の完成度が低い。これは同社に限らず、ドイツ国内に溢れる殆んどの途上国製品にも該当する。
同じ途上国の製品が日独で流通していながら何故、質が違うのか。これには、検品基準の甘さが考えられる。ドイツの同社製品はボタンが殆ど欠損していたり、縫製ミスがあったり破れがあっても定価で売っている。多くの海外企業と同じく、安かろう悪かろうが当然の状況。顧客も販売員もそれを当然と思っており、同社製品は長持ちせず1年位で使い捨てが多い。


仮に鑑識眼の厳しい日本の顧客を対象にした場合、安いながら質の高い製品を提供しなければならないが、現実的にはコスト増は避けられない。
また一過性の生産体制である為、サイズが無くなった場合、取り寄せが出来ない場合が多い。ドイツであれば店舗数の多さでカバーできるが、日本では今のところ不可能だ。
ファッション性の高さから既存の百貨店や高級ブランドがライバルとの意見もあるが、前述したようにアフターメンテナンスや接客等のサービス及び製品の質から、ライバルになる事は無い。


今のところ隙間産業を上手く狙ったH&Mの土壇場だが、安かろう悪かろうを知らない日本で生き残れるのかは疑問だ。日本市場に合わせ質の高い製品を提供しなければならない場合は、売りである低価格かファッション性の何れか一つを欠くことになり、ユニクロや既存の百貨店や高級ブランドと同じ土俵に立ってしまう。
日本市場の特殊性は、顧客の鑑識眼の高さ及び過当競争の厳しさに尽きる。


日本一号店は当初の予定では原宿であったが、銀座になった。同社の世界戦略をそのまま日本に当て嵌めていたら、原宿か渋谷が一号店になった筈だ。
故に、既存の百貨店や高級ブランドをライバルにする日本国内専用の戦略になる可能性も高いが、今後の同社の動向を静観するのも一興かもしれない。


※H&M公式サイト


※東京・銀座に「H&M」日本進出1号店がオープン 約700人が列をつくる(09/13 12:05)フジニュースネットワーク