ドイツにおけるクラシック音楽


クラシック音楽の本場といわれるドイツ。ドイツへ留学する音大生も多い。オペラは公共劇場で、オーケストラは教会で10EUR以下の格安で鑑賞できるところが多く、日本よりも容易にクラシック音楽に親しめる環境にある。ラジオではクラシックラジオという局が一日中、クラシック音楽を流している。
リューベックの教会には世界屈指の大きさのパイプオルガンがあるが、それほど上手くない学生が普通に練習している様子も見られる。


しかし、これだけクラシック音楽が身近にありながら若者のクラシック音楽離れが激しい。
若者だけではなく、上流階級は別ながら一般的な大人もクラシック音楽をあまり聞かない。


故に、クラシック音楽業界は日本人に代表されるアジア系の学生や演奏者が多くなるが、ドイツ人からすると、日本人がクラシック音楽業界で活躍しているのが理解できないようだ。


ドイツ人のクラシック音楽離れを理解するには、彼らがクラシック音楽をどのように捉えているかが鍵となる。
多くのドイツ人にとってクラシック音楽とはその名の通り古典音楽、伝統音楽に過ぎず、古臭いとの認識があるからではないだろうか。一部のドイツ人は、クラシック音楽も海外の土着音楽も世界では同じ位の知名度だとの認識を持っている。だから、日本人が数多くのクラシック音楽の作曲家や曲を知っていると素直に驚く人も多い。
確かに、日本人はイスラム音楽、インド音楽、モンゴル音楽、チベット音楽、中国音楽、に疎い。ドイツ人もまた日本人と同じくこれらに疎いが、ドイツ人にしてみれば、自分たちが和楽や外国の伝統音楽に疎いのだから、遠いアジアの人々がドイツの伝統音楽であるクラシック音楽に詳しい訳がないと思ってしまう。


無論、昨今は和太鼓がブームだが、それは最近の事。日本に来て和太鼓を嗜むようになるドイツ人は多いが、和太鼓修行の為に日本へ来るドイツ人は少ないように思える。
世界の音楽に多大な影響を与えたクラシック音楽だが、当のドイツ人達は影響力を知らない。
どのくらいの日本人がドイツの和太鼓ブームを知っているのかは分からないが、クラシック音楽の影響力は和太鼓の比ではない。
クラシック音楽は宮廷音楽が主で、和楽は雅楽などの宮廷音楽よりも民間音楽が広まっているとの相違は、問題ではない。


最近の日本では伝統音楽への回帰が多いが、ドイツ人も自国が生んだクラシック音楽を再評価すべきように思える。ロック音楽も元を辿ればクラシック音楽の旋律に辿り着くが、アレンジしすぎる。2000年にデビューした女性4人のバンド“bond”はクラシックの弦楽四重奏ながら原曲を現代風にアレンジしているが、彼女たち以外ではあまり思い当たらない。
日本の伝統音楽回帰も、札幌祭りのソーラン踊りや高知のよさこい踊りに代表される全国各地のパレード祭のように原曲そのままではなく現代風にアレンジしたものが多いが、ロックほど大幅に変容していない。老若男女親しめるような民謡のアレンジも出てきている。
原曲を尊重しつつも、伝統音楽を復活させる方法は日本にあるのかも知れない。