著作権法改正案という名の人権擁護法案




フーズム城


著作権法改正案が参議院本会議で可決された。これにより10月1日から違法にアップロードされたものを違法と知りながらダウンロードした場合、刑事罰の対象となる。
自民党議員も民主党議員も、阿呆ばかりとしか言いようがない。現状の音楽産業は勿論ながら、市場形態すら把握していない。反対票を投じたのが、共産党社会民主党などの左翼政党ばかりなのも情けない。本来であれば、言論統制を得意とする社会・共産主義国家が制定する法律であり、民主・自由主義国家は反対する立場にある。

今回の改正案は、違法ダウンロードの増加=CD売上減との音楽業界による安直な喧伝に起因する。この改正案によってCDの売上が回復し、著作権も保護されると本気で考えているのなら、政治家失格は自明の理だが、利権屋の甘い蜜に群がる政治屋なら仕方がない。


◆CD売上減の要因


CDの売上低下の要因は、少子化による若年購買層の減少や、音楽以外の娯楽の普及等、幾つか挙げられるが、一番はMP3やデジタル配信等の普及によるディスクレス化に他ならない。CDの売上を回復させるのなら、CDレンタルや中古CD販売、デジタル配信を禁止する方が確実に効果がある。
他の可能性としては、テレビによる過剰なまでの捏造K-POPブームゴリ押しの影響も考えられる。インターネットが普及しつつあるとはいえ、テレビの影響力は未だ強い。魅力のないK-POPばかり推し、魅力的な日本のミュージシャンが紹介されないから、日本人の購買意欲も沸かなくなる。


K-POPブームついに終焉? チケット売れずイベント中止、返金もできず 2012/6/22 J-CASTニュース

(抜粋)
KARAや超新星といった人気グループが出演者リストに名を連ねていたが、6月21日、イベントを主催する企画会社「アンフィニジャパン」(大阪市)のサイトで中止が発表された。


それでも、日本はCDの売上高世界一で、世界市場の三割をも占めている。CDが売れない世界の潮流の中で、日本だけが売れていると言っても過言ではない。
日本の有料デジタル音楽配信市場は、アメリカに次いで世界第二位。人口の割合からすれば、日本は世界最大の音楽市場でもある。日本の音楽市場の健全性が問題ない段階での曖昧な改正案は、様々な禍根を生み出す。


◆逮捕対象者続出


2011年度音楽メディアユーザー実態調査報告書(一般社団法人 日本レコード協会 )


仮にCD売上減が違法ダウンロードの影響だとすれば、相当数の人々が違法ダウンロードをしていることになる。CDの売上は1998年に最大の6000億円市場となったが、現在はその半分以下。


著作権のある音楽ディスク複製の違法性は曖昧ながら、私的利用でも自身の購入品でも、コピーガードされている映像ディスクのリッピング(複製)が明確に違法となった。
日本レコード協会の2011年アンケート結果では、中学生から60代の24.2%がCD等、市販の音楽ソフトや放送からコピーした経験があるという。映像ディスクの複製だけが違法では、音楽業界にとって何の益もない。MP3が全盛の今、著作権のある音楽ディスクの複製までは明確に違法化できないとの判断だろうか。しかしながら、4人に1人が音楽ソフトや放送からコピーしているとしたら、CD売上に対する影響はかなり大きいと思われる。
にもかかわらず、音楽業界は、CD売上減の原因としてインターネットだけを不思議なくらいに敵視している。


レンタルショップで映像ディスクを借りる人々で複製を作っている人も多いように思えるから、レンタルショップへの打撃も大きい。最近の映像ディスクはコピーガードがないものを探すほうが難しい。コピーガードがない古いDVDにしても、複製禁止の表示が多い。


レンタルショップ利用者だけではなく、iPhoneに代表されるスマートフォンや、DVDドライブのないiPadやモバイルノート使用者も法を犯す人間となってしまう。
最近では、ブルーレイディスク・ドライブ付きのパソコンも増えたが、ディスクドライブとディスクは場所も取り、重みもあり繊細なので元来、持ち運びに適さない。よって、自分で購入した映像ディスクをデジタル化してHDDに収める人もいるように思える。大容量のデータを保存し持ち歩くにあたり、ディスクよりもHDDが良いのは、時代の流れとして当然の結果でもある。


更には、インターネットにおける動画サイトの再生キャッシュだけで逮捕される可能性も否定できず、殆どの国民が逮捕の対象となってしまう。結果、親告罪とはいえ、気に入らない人物の別件逮捕も容易という中国並みの国家になる。
人権擁護法案の危険性が問われているが、その代用法案と表現しても過言ではない。


YouTube視聴も有罪? 日本の新しい著作権法で波紋2012.6.22 産経新聞


アップロードされた映像が違法か否か、どう判断しろと言うのだろうか。「違法にアップロードされたものと知りながらダウンロードする」の「知りながら」では曖昧すぎる。


他の疑問点としては、MP3に入っている音楽が違法ダウンロードかどうか、どう判断できるのだろうか。他国の著作権元まで全て把握できるのだろうか等、考え出したらキリがない。


これだけ曖昧な改正案であれば、明確にするとの大義名分のもと、厳罰化される可能性も否定できない。


◆日本の音楽・映像文化の衰退を齎す


ニコニコ動画では、個人が既存の動画や音楽を合成編集するMADが花盛り、YOUTUBEでも、個人が既存の音楽をバックにダンスする「踊ってみた」動画が数多くアップロードされている。これらの殆どが、アップロードは勿論ながら、再生キャッシュでも違法となると、視聴すら違法となってしまう。
日本人は独創性も高いが、単純なコピーではなく更に進化発展させるのも得意な民族でもある。
日本は他国と違い単純な違法アップロードよりも、元素材を尊重した編集が多い。
 

厳罰化は、以下のような流れも生まれにくくなる。



初音ミク】 千本桜 【オリジナル】 HD720P



【BadApple!!】傷林果 【ShouRinka】



【それっぽく歌ってみました】邦楽版BadApple!!-傷林果-【杏ノ助】



【WAGAKU Senbon-Zakura digest】 和楽・千本櫻 ダイジェスト版 full HD


昔はテレビやラジオの影響でCDを購入する人が多かったが、今はインターネットの影響からとの人も多い。強引な規制はインターネット上の音楽市場すら萎縮させ、CD購買の要因も消し去ってしまう。


日本国内の規制を強化するよりも、まずは中国や韓国で違法にアップロードされているサイトへの対処を考えるべきだった。海外の動画サイトの中でも中韓の動画サイトは、突出して日本の番組や音楽の違法アップロードが溢れかえっている。違法アップロードの管理が出来ない動画サイトにもかかわらず、日本企業の広告も多い。
今回の法改正では、中韓の動画サイトに対する抑止力は殆どない。結果、日本のニコニコ動画を萎縮させ、中韓の動画サイトの活況を許すことになり、更なる違法アップロードの温床拡大に繋がる。
中国の動画サイトYOUKUやTUDOU、韓国のPANDRAが隆盛して、日本がニコニコ動画だけとの現状は日本のガンジガラメの規制に因るところも大きい。


ディスクにしてもHDDにしても、複製を作らなければデータを長期間保存できない。データの保存期間はHDDが10年程度、ディスクが30年〜50年と、人の平均寿命よりも短い。絶版ディスクだとしたら、複製でもしないと若いころに観た映像ディスクを老後に再び鑑賞することはできない。
そんな先の話は、余命幾ばくもない議員にはどうでもよいのかも知れないが、文化の継承は間違いなく絶たれる。


日本とは対照的に、オランダとスイスは昨年、私的ダウンロードを合法化した。
過去に独占禁止法の疑いを問われたJASRAC(日本音楽著作権協会) とその天下り元の文部科学省にしてみれば利権拡大で収入増だが、国民にとって何のメリットもない。
言論の自由を奪われ別件逮捕者が続出し、音楽や映像分野の創造性が衰退し、更にはCDの売上も伸びないという多重苦になって、賛成票を投じた議員は、初めて悪法だったと気付くのだろうか。