世界一のサービスが齎す空虚感


サービスに対する考え方は日本と世界で異なるが、その中でも販売業は雲泥の差がある。
日本であれば、店に入って最初に聞く店員からの挨拶は『いらっしゃいませ』だが、ドイツは『こんにちは』となる。日本の挨拶では客が返す言葉は少ないが、ドイツでは同様の挨拶を返さなければならない。これは大陸国家として敵か味方かを判別する意味もあると良く言われるが、そうとも思えない。


それは他の大陸国家と比べると分かる。イスラム諸国の店員は買う気がある客にだけ媚を売り、冷やかしと分かれば追い返すこともある。
近隣諸国の中国や韓国も大陸国家として数多の異民族に支配されてきたが、店員の態度は国際化に伴い大分改善されたとはいえ日本に遠く及ばない。特に中国は共産主義との事もあり顕著で、購入しても感謝の挨拶は殆ど無い。
故に、これら国家にとって日本人店員による愛想やドイツ人店員による心の篭った挨拶は、不可解なものに映る。


それでも、日独どちらが良いとしたら、ドイツ人店員の笑顔と言葉には適わないように思える。
ドイツ人店員は、イスラム諸国の店員と違い買わない客にも笑顔で見送りをするし、中国人店員のように無愛想でもないし、日本人店員のように表面的でもない。
ドイツ人店員の挨拶は声が小さいが、相手の目を見て友人に伝えるかのように感謝する。
対照的に日本人店員の挨拶は声が大きいが、機械的でマニュアル的でドライな感じがする。
サービス過多な日本で空虚感を味わうのは、店員の心の篭っていない挨拶に追う部分が大きい。日本のサービス産業は世界一と言っても過言ではないが、そこには昔ながらの人情が無い。


確かに、ドイツ人店員は日本人店員のように気が利かない。セールストークも下手だ。
しかし、プログラム通りにしか動かないロボットと、不器用ながらも賢明に生きる人間のどちらに愛情が沸くかと問われたら、私は後者を答える。


日本人店員が失った真心が、ドイツ人店員の中に未だ残っている。