拡散する日本の品種

mensch2009-10-19



実りの秋。
最近は、アジア食材店だけではなく、至るところで日本の食材が手に入るようになってきた。
KAKIやSHIITAKEなど、日本と同じ呼び名のものも多い。


ドイツには早くもミカンの季節がやってきたが、近所の小さなスーパーでも日本の品種が店頭に並ぶようになった。
名称はSATSUMAS、つまり薩摩ミカンだが、南国スペイン産の為か日本での味わいと同じ。
薩摩ミカンは最近になってヨーロッパに入ってきたものではなく、明治時代にアメリカ大使館経由でアメリカに齎され、世界に広まったのだという。ゆえに、南部アメリカにはサツマとの地名を持つ町が多くある。


カボチャも最近では日本の品種が好まれており、同じく近所の小さなスーパーで普通に購入できるようになった。
HOKKAIDOとの名称で、その名のとおり北海道が原産。明治時代にアメリカに齎されたが、ヨーロッパで栽培されるようになったのは1990年からだという。


食材一つを見ても、日本は世界に大きな影響を与えている。
ブロッコリーで世界シェア7割を占める“サカタのタネ”の品種開発能力は凄いが、同社は各国の好みに合わせて品種を開発し振り分けているという。
しかし、良いものは万国共通なのではないだろうか。品種開発能力だけではなく、実際には食生活においても味覚においても、日本人は世界の最先端を走っているように思える。


日本が世界水準を追っているのではなく、世界が日本水準を追っているのが現実だが、日本の原動力の一つとして“隣の花は赤い”“隣の芝生は青い”との発想が挙げられる。
多くの文明を生んだユーラシア大陸の極東に位置し、中華思想を振りかざしてきた中国歴代王朝を見てきた日本。そういった発想を持って当然の環境ともいえる。


日本の悲観的な報道も、日本人の不平不満の多さも、自国を過小評価する故なのだろう。
足るを知るのは大切だが、足るを知りすぎると、人は現状に満足し進歩しなくなる。嫌な発想だが、日本人が現状に満足してしまったら、日本の発展も終わるのかもしれない。


しかしながら、多少の自信くらいは必要なのではないだろうか。欧州携帯電話市場における日本企業敗退の要因を思い出して欲しい。日本のアニメやゲームが欧州で愛されている要因を考えて欲しい。
日本企業はヨーロッパに向けて日本国内の最先端の携帯電話開発とは別に、日本よりも遅れていたヨーロッパ標準に合わせて商品開発をしてしまった。結果、おこぼれながらも日本の技術を活用した韓国企業が市場を席巻した。今ではiフォンに代表されるようにMP3だのゲームだのTVだのといった日本と同じ機能の携帯電話が流行っている。
対照的に、アニメやゲームは翻訳しただけ。海外戦略の為に改悪されなかったのが隆盛の要因なのだろう。


前述のミカンやカボチャは、日本人が世界に対して必死になって売り込んだものではない。世界がただ、認めただけだ。
アニメやゲームにしても同じかもしれないが、日本国内に対して開発しているものが、世界に対して無敵になったり、対照的に世界に対して通用させようと開発したものが世界で全く相手にされないとの現状を、日本人は正しく理解する必要があるのかもしれない。


世界に夢をまく「サカタのタネ」―国際市場に挑戦する研究開発力 (IN BOOKS)

世界に夢をまく「サカタのタネ」―国際市場に挑戦する研究開発力 (IN BOOKS)