ドイツ人の日本人観アジア人観

mensch2006-07-09


ワールドカップは楽しい催しだが、テロだ極右だのと町が警察で物々しくなるのも事実だ。また、旅行者がそういった被害に遭わないとの確証も無い。中でも最近の極右弾圧報道から、日本人であれば自分も被害に遭うのではと心配する方も多いだろう。ネオナチは旧東ドイツ地区で暗躍しており、ロストックポツダム等の一部の地域では危険な場所も確かにある。ドイツにおける極右組織はホロコースト産業の影もあり、極右構成員の中核であるポーランドやロシア等の東欧から流れてくる移民やその子孫は後を絶たず、勢力は未だ弱まっていない。対照的に西ドイツは裕福層も多く、町並みも美しく治安も良く極右勢力は皆無に近い。そんな現状ではあるが、ワールドカップ期間中のドイツは外国人観光客で溢れかえっている。


普段は国に対して何の感慨を持っていない者でも、海外へ出れば否応無しに祖国を背負う。ましてや此処は日本から遠くはなれたドイツ、アジア系であれば必ず出身地を聞かれるのが常というものだ。その時、初めて祖国によって自身も判断されるとの現実に直面する事であろう。自分は自分、国など関係ないと言いつつも、外見が異国系であればネイティブドイツ人と同等に見られることはない。差別に敏感なドイツ人だが、差別に敏感だからこそ、相手が外国人だからとの理由で慎重に親切に扱う場合もある。だが、それも差別ではないのだろうか・・・。


ドイツにおいて、アジア人はどの様に思われているのか。ここからは一般論を述べるので、全ての人がそうではないとの事を最初に付け加えておきたい。現実問題として、残念ながら日本人以外のアジア人観はあまり良くない。


ドイツで一番多いアジア系(トルコは省く)は中国人だ。ドイツにおける中国のイメージは非常に良い場合と非常に悪い場合に両極端に分けられるが、相対的には低い。良い点は経済成長、長い歴史、数々の音楽家。悪い点は中国人コミュニティーに代表される閉鎖性、狡賢さ、ガサツさ、そして人権問題であろうか。食文化に関しては、中国人は何でも食べるとの逸話が常識化している。また、中国製品は安かろう悪かろうの代名詞だ。中国人社会は貧しい移民から華僑や新興エリート階級までと、思想や経済の差が異常なほどある。これは現在の中国内事情がそのままドイツでも再現されており興味深い点だ。だが悲しむべきことに多くの場合、中国人は欧米において軽蔑の対象となっている。貧しい出稼ぎ労働者としてしか見られておらず、アジア人を見ると辺り構わず‘ニーハオ’と話しかける輩は何れも軽蔑の表情をしている(そういった輩は、アフリカ人を見ても‘ジャンボ’と嘲笑を込めて声をかける)。相手が中国人ではなく日本人だと分かると、たじろぎ、お詫びをする有様だ。彼らは日本人を蔑視していないが、それ以外のアジア人を蔑視する迎合差別主義者に過ぎない。


韓国人はどうだろうか。彼らのイメージは残念ながら頗る悪い。昨今の過剰なまでの愛国心(自尊心)と、横柄な態度はドイツでも知られるところだ。むしろ、そういった事実を有耶無耶にして報道している日本よりも更にドイツ人は冷静に韓国人を見ているのかもしれない。だが、一般的に韓国という国自体、ドイツ人の中では知らない者も多い。アジアとしてドイツ人が想像できる国家は日本と中国とタイだけとの事が多々あるからだ。知っている者でも、北朝鮮と同一視するか、日本か中国の一部と思うくらいで国として認識している者は少ない。更には、ドイツでは韓国出身の養子が多く韓国人=養子とのイメージを持っているものも多く、韓国は貧しい国で、子供を海外に売りつける国と思われており、ドイツ国内の韓国系は哀れみの対象となる事が多い。韓国企業ではサムソンやヒュンダイ(これら韓国企業の大半で外国人投資家が筆頭株主となっており、最早韓国企業とは言えないのかも知れないが)が奮戦しているが、ドイツの消費者は韓国製と思っておらず、日本製だと思っている者も多い。韓国企業もあえて韓国製品と喧伝しない。これには訳があり、ドイツでは日本製以外のアジア製品(韓国や台湾や中国製)は安いが壊れやすいとのイメージが存在するからだ。


それ以外のアジア系では、ベトナム系も残念ながら未だに旧東ドイツにおいて差別の対象となっている。昔から同じ共産圏との事で多くのベトナム人が出稼ぎにきており、今でもチェコ国境付近にはベトナム人が違法に闇屋台店を開いている。特にベトナム系は現在においても観光としてドイツに来る者が少なく、警察から露骨にパスポート提示を求められる事も多い。タイに関しては観光地との良いイメージもあるが、ドイツ人男性にとってタイ女性は性の対象としか見られない事が多い。故にドイツに住むタイ人女性は、日本におけるフィリピン人女性と同じような境遇に立たされている。


では、日本はどうだろうか。対日観は老若男女問わず、すこぶる良い。現在のメルケル首相は中国と距離を置いており親日路線だ。
中年以降の男性に会えば、日本とドイツは共に戦った同盟国であり、日本は技術大国だと誉めそやされる。彼らは車やバイクや電化製品を通して日本に親しんでいる。ある程度の拘りを持っており、日本製品がステータスシンボルとなっているからだ。
若者や子供はドイツに溢れかえる日本製アニメやゲームを享受しており、多くの若者は、こういった現代文化がきっかけとなり日本語教室に通っている。若い女性も日本のファッションに注目している。日本のファッション雑誌がドイツのファッション雑誌でも紹介されており、ティーンエージャーに至っては、日本のコギャルファッション専門誌まで出る有様だ。これら若者の志向を鑑みるにあたり、日本人気はこの先も拡大すると思われる。

スポーツ好きも日本の伝統的スポーツを愛している。相撲の各場所はドイツのテレビでも無料放送しており(K-1も放送している)、空手、柔道、合気道(最近は韓国が国を挙げてテコンドーを喧伝しているが・・・)は順にフィットネスクラブの人気コースだ。それ以外にも、弓道や剣道もマイナーながら武士道好きなドイツ人の間で根強い人気を保っている。

裕福層やエリート層の間でも日本好きが多い。彼らにとって、日本は自身の洗練された感覚を表現するにあたって格好の衣装の様だ。日本庭園を自宅に設け鯉を育成し、盆栽を嗜む。寝室にはタタミベットがあり、日本の兜や浮世絵が飾られている事もある。ビジネスでもプライベートでも寿司屋には正装で向かい、上品に箸を使いこなす。そして何台かある車の中にはレクサス。カオスのイメージしかないアジアの中で唯一、静寂と洗練されたイメージがある日本だからこそ、ドイツの裕福層にも受け入れられているのだろう。是ほど裕福層に愛好されるアジア文化は日本以外には殆どない。思いあたる事といえば、中国の陶磁器や大仏の頭を部屋に飾る事位だろうか。

だが一つ、日本のイメージにおいて懸念材料がある。それは捕鯨問題だ。昨今は捕鯨再開賛成国も増えており日本にとって追い風が吹いているが、ドイツ人にとって食鯨はまだ理解できない文化となっている。環境保護団体が在独日本大使館の前に巨大な鯨のオブジェを設けた行為は記憶に新しいだろう。日ごろ主張の無い日本外務省。捕鯨を理解してもらおうとする努力すらも怠っているのだから、北朝鮮問題などは処理能力を超えていると思われる節もある・・・。


ドイツ国内で大量に育成される親日家達。それらは全てドイツの民間から自然発生している。他のアジア諸国、もっぱら中国や韓国は国を挙げてドイツに売り込んでいるにも拘らず、反中・嫌韓家が増えるばかりの現状は日本国内と同じであろうか。
日本人には主張が足りない。中国人や韓国人には謙虚さが足りない。それらが是正されれば、アジアは正しく認識され親日家も更に増え、反中・嫌韓家も減ることだろう。