代理戦争



先週土曜に行われたワールドカップ・日本対オランダ戦は日本の負けに終わったが、惜敗というよりは善戦したと讃えたい。日本代表の決定力不足は否めないが、相手は欧州の強豪。次回のデンマークも強豪だが、引き分けで決勝トーナメントに進出できる。


オランダが後半に一点を入れる直前、ロビン・ファン・ペルシ のハンドがあったが見逃された。後半ロスタイムでは、長友が相手選手からタックルを受けユニフォームまで掴まれ阻止されたように見えたが、PKにならなかった。
テレビで見ていたが、ドイツ人実況アナウンサーもElfMeter (エルフメーター)PKと叫び、オランダはSchlimm(シュリム)あくどいと吐いていた。日本贔屓だったのかオランダ嫌いだったのか分からないが、概ね日本に好意的な実況だった。
しかしながら、審判員には逆らえない。オランダ戦とは対照的にカメルーン戦では日本に有利な判定も多かったから、日本人としてはあまり抗議できない。


古今東西、隣国同士は仲が悪い。
ドイツ人実況アナウンサーも力が入った日本対オランダ戦だったが、オランダ語はドイツ語に最も近い言語ながら一般的なドイツ人、特に男性はオランダが好きではない。歴史的な関係も影響しているが、オランダから流れる麻薬、更には運転マナーの悪い運転手、アウトバーンを我がもの顔で爆走するトラッカーなど身近なところでもオランダに対しあまり良い印象を持っていない。
選手たちの本心は分からないが、ドイツ人はオランダが相手だと応援に力が入る。


表立っては言わないが、トルコがワールドカップに出場しないとホッとするドイツ人も多い。差別的な感情ではなく、トルコが勝つとトルコ人が街中で騒ぎ煩いからだ。ドイツにトルコ人が増えたのはドイツ政府がトルコと雇用協定を結んだ故だから、ホッとしてしまうドイツ人が増えてしまったのは政治的影響の結果といえる。


スポーツに政治を持ち込んではならないとはよく言うが、実際には多くの国は表立っては出さないながらも、対戦相手国との政治的外交関係に影響を受けている。更には、歴史や愛国心も加わってくる。


○対戦相手国との政治的外交関係
エルサルバドルホンジュラス戦争は、代理戦争であるサッカーが原因で勃発した。1982年にイギリスとアルゼンチンの間で起こったフォークランド紛争はイギリスの勝利に終わったが、1986年ワールドカップ・メキシコ大会の両国の試合は代理戦争と呼ばれた。同試合では、マラドーナを配するアルゼンチン代表が神の手や五人抜きの伝説を残し、フォークランド紛争の雪辱を果たした。


○歴史
自身が歴史好きな為か、今回のオランダ戦でも過去の歴史を思い浮かべてしまった。16世紀に始まる紅毛船を通した交易関係、インドネシアでのオランダによる人種差別的な植民地支配、アメリカや中国と画策し大東亜戦争へと日本をおびき寄せた卑怯さ、戦後も一貫して日本を悪役にし、被害者面する厚かましさ・・・。
歴史に興味を持つと、オランダを是が非でも負かして欲しいと思うのは仕方がない。オランダといえばチューリップ畑と風車しか思い浮かばない日本人選手と、オランダの暗黒面を知っている日本人選手とでは、気概が違ってくるように思える。


韓国は日本が相手になると、選手の動きがアグレッシブになる。反日と捏造による歴史教育の影響でしかないが、日本人選手は気迫で韓国人選手に負ける。


愛国心
スポーツの国際大会に愛国心が必要ないと言うのであれば、そもそも国別に分ける必要はない。オリンピックにしてもワールドカップにしても、愛国心があるから人気がある。オリンピック委員会が選手に国籍開示を禁止させ、個々の選手やチームの祭典になっても人気があるとは思えない。


カメルーンの代表選手内で報奨金の配当を巡って内輪もめがあったようだが、どんな状況でも強固な愛国心があればチームは一つに纏まっていたように思える。西欧列強の都合で国境を区切られたカメルーンには200の民族が住み、旧宗主国のフランスやイギリスの言語が公用語になっており、国民を一つに纏めるには普通の愛国心教育では間に合わない。対照的に単一民族の国家が纏まりやすいのは言うまでもない。


北朝鮮は国際試合で活躍した選手に対する報酬も多いが、国自体が貧しいため、先進国の選手が貰う報酬に比べたら微々たるもの。
在日朝鮮人であり川崎フロンターレの選手でもある鄭大世は、僅かな報酬のために北朝鮮の代表選手になったわけではない。彼はブラジル戦開始前の国歌斉唱で涙を流し歌っていた。
ポルトガル北朝鮮戦は惨憺たる結果だったが、本来であれば北朝鮮代表はワールドカップ出場すら難しいレベルだった。鄭大世のような人物がアフリカの強豪であるカメルーン代表に多く存在したのであれば、結束力も維持出来ただろうし、日本も負けていたのかもしれない。


愛国心や歴史、政治的外交関係をスポーツの国際試合で全面的にアピールするのは問題だろうが、選手一人一人がこれらを知り“心に秘める”行為は問題どころか選手のモチベーションを高める上で、プラスの効果を与える。
日教組が教鞭を執り、表面的な友好を煽るマスコミが存在している現状では、全ての選手が愛国心や歴史や政治的外交関係を“心に秘める”のは難しいのかもしれない。反日団体愛国心や日の丸を糾弾している日本では、鄭大世のような真似は出来ないのかもしれない。しかしながら、“心に秘める”ことは一人からでも始められる。
サッカーは11人でやるスポーツ、一億二千万の日本人が“心に秘める”よりも、11人が“心に秘める”ことの方が簡単なのは自明の理。
たった11人が“心に秘める”だけで、国家を代表するチームのモチベーションは変わる。それほど難しいことではない。
サッカーは集団競技であり監督の采配が重要ながら、監督一人で選手の精神面をサポートするのは難しい。日本代表に必要なものは、戦術面や技術面だけではない。


岡田監督にオランダ監督が侮辱発言…本国で報道、中国人も非難  2010/06/20(日) サーチナ