日独の高層住宅に対する印象の違い

Burj Dubai



日本人とドイツ人の住宅に対する評価は違う。日本人はとかく都会や刺激が好きだ。故に、理想の住宅は街中が良いとなる。それも町の夜景が一望できる高層住宅を求める。
映画『バベル』で東京の高層住宅に住んでいた日本人家族は、成功者としての心の暗然を表現していたが、窓外に一面広がる夜景を眺めながらのブランデー一杯も悪くは無い。とは言っても、国が変われば印象も変わる。


ドイツにおける高層住宅のイメージは頗る悪い。
私が高層住宅を眺め、良い建物だし住みたいと言うと、ドイツ人は眉をひそめ、住みたいとは思わないと言う。最初は私も理解できなかった。しかし、理由や背景を知っていくと彼等の拒絶反応も分ってくる。


東ドイツは、社会主義政権下で多くの人々が郊外に移住したため高層住宅が一般的だが、西ドイツは東ドイツほど乱立していない。
西ドイツの高層住宅は特定地域に集中しており、比較的家賃が安いこともあり、生活保護者も多く住んでいる。
また、高層住宅は水を貯水しており、環境に敏感なドイツ人は衛生面から毛嫌いする。
更には、旧東ドイツ時代に建造された高層住宅は無機質で、陰鬱な印象を与えている(外壁は復興税によって改修されつつあるが)。
故に、現代ドイツでは東西問わず高層住宅はあまり住みたくない住居との認識が一般的となる。


典型的な東ドイツ高層住宅(ライプチヒ)


では、ドイツ人が理想とする住宅は何だろうか。第一に街中ではなく、近郊の大通りに面していない立地。家の周りに森があり、窓から他の建物は極力見えなく、木々の緑だけ見えるのが良い。更に、自然の小川が流れており、そのまま自然公園に続く遊歩道があれば文句なしだ。もちろん、集合住宅ではない。
しかし、これはあくまで理想であり、現実は街中の集合住宅が殆どだ。


ドイツ人の理想的住居


ドイツ人は刺激や物質よりも、自然や平安を求めている。
ドイツの町は自然と共存している。それが癒しを生み、自然の偉大さ、人間の小ささを教えてくれる。
日本人も、そろそろ都会志向を捨て、田舎回帰すべき時代に来ているのではないだろうか。


ドイツの街中の年代物集合住宅