ドイツ人年金受給者の黄昏時

中公文庫 欧州大戦
超インフレで紙くずになった札束をゴミ箱に捨てる人たち

ドイツも世界各国と同じく不況の真っ只中だが、今のところ高齢者は豊かなようだ。
東ドイツの高齢者にいたっては、積立をしていないにもかかわらず年金を受給している。そんな彼らを、現代の貴族と表現しても過言ではない。


持ち家の場合は維持費だけで済み、借家でも最初の家賃から値上がりしないとの契約を結んでいる事もあり、格安で借りている高齢者が多い。
更に、核家族化で夫婦や単身のみが多く、気疲れする事もない。核家族化の影響か分からないが、ドイツの高齢者には、「自分の金は自分たちが使う。子供や孫の為には使わない、残さない」との思いが強い。故に、遺産は持ち家だけとなるが、借家の場合は何も残さない高齢者も多い。
日本であれば、孫の為にお金を残したり使うのが趣味との高齢者も多いが、ドイツでは例え相手が孫でも、金の貸し借りにはシビアだ。


では、ドイツの高齢者は何に金をかけるのだろうか。彼らが使う先は外食か旅行かに絞られている。
日本であれば、レストランや旅行先は若い人たちで溢れかえっているが、ドイツは高齢者で溢れかえっている。若者はといえば、食事は自宅かファーストフード店で済まし、レストランではビールだけ。
バスツアーや客船旅行は高齢者が多く、若者はバックパッキングでなるべく費用をかけない旅行を心がけている。このように、ドイツでは総人口の4分の1を占める高齢者が消費の原動力となっている。


世界に誇る年金制度を維持してきたドイツだが、今後ドイツで高齢者になる人々は現在の高齢者のような生活は送れない。
現在の年金受給開始は65歳からだが、2012年から段階的に延期され、2035年には67歳からとなる。現在は離職時手取り支給額の70%を年金として受け取れるが、2035年には4割程度しか受け取れないとの試算もある。


西ドイツの人々は東ドイツの年金受給者を養っているだけではなく、東ドイツ復興税も払っている。それでいて、殆ど年金を受給できないとあっては現代の高齢者の奴隷と例えられても不思議ではない。ドイツの若者は、場合によっては収入の半分近くを税金で取られてしまう為、慎ましい生活を余儀なくされている。


第一次世界大戦後、先進国として史上空前絶後ハイパーインフレがドイツを襲ったが、一番の被害を受けたのは高齢者だった。老後の生活の為に蓄えていた金は紙くずとなり、年金の価値も無くなり、結果として多くの自殺者を生んだ。
レストランに入って食事をしたら会計では倍以上の金額になり、家を売った金でパンしか買えなくなる程のインフレ。現在も残されている当時の100兆マルク紙幣がインフレの凄まじさを物語っている。


Rentner entsorgt versehentlich 15 000 Euro im Müll Mittwoch, 13. Januar ddp

München (ddp-bay). Ein 79 Jahre alter Mann hat in München 15 000 Euro versehentlich in den Müll geworfen. Wie die Polizei am Montag mitteilte, meldete sich der Rentner nach seinem Wohnungsumzug vor ein paar Tagen bei der Polizei und gab an, einen Umschlag mit der großen Geldsumme wohl versehentlich zum «falschen Stapel» gelegt zu haben.

1万5千ユーロが入った封筒をゴミと間違えて捨ててしまった年金受給者。二日後に気づいたが、現金の入った封筒は既に焼却処分されていた。


当時のドイツ人高齢者は、現代の豊かなドイツ人高齢者を羨ましく思っているのだろうか。現代のドイツ人高齢者は、死しか残されていなかった当時のドイツ人高齢者を哀れんでいるのだろうか。
時代が変われば国が変われば、状況も変わるが、ドイツほど高齢者の立場が激変した国はないと思う。
最近の日本では国など関係ないと嘯く人も多いが、ドイツの高齢者を見ていると、人の人生は国家によって大きく左右され、国家によって守られているとの現実を否が応でも感じてしまう。


今日は2月22日、竹島の日。国家概念が希薄となった日本人は将来、他国に貪られ自国が貧しくなり、結果として自分も貧しくなったとしても、まだ国など関係ないと嘯いていられるのだろうか。